友




                        2018. 6. 12   

 梅雨の季節になると思い出すことがあります。

亡くなった二人の友人のことです。

一人は若くして病気で亡くなり、もう一人は年老いて亡くなりました。


 若かった友人は幼い子供が一人いたのですが、

子宮癌を患っていました。

ある日の病床を訪れた時、彼女は一人で横たわっていました。

彼女の兄がその幼子を連れて遊園地に出かけたところでした。

彼女の意識は朦朧としていましたが、そっと語りかけました。

すると目から点滴の黄色い色をした涙がこぼれ、止まりません。

子守唄を歌っていると、突然、死が始まりました。

慌てて医師を呼んだりしながら

私は、たった一人で彼女の死を看取ることになりました。

 
 彼女は、自分の死を幼い娘に見せたくなかったのかもしれない。

娘が遊園地で遊ぶ楽しい姿を想像しながら、少しでも安心して

去りたかったのかもしれないと思います。

突然、人生の終わりに立ち会うという重要なお役目をしながら

忘れることの出来ない教えを彼女から頂いた気がします。

チューブや注射の刺さった痛々しい体で

目から黄色い涙を流した友人は、

最後の息を引き終えるまで、本当に生きたのです。



 もう一人の友人は老人ホームで、家族に見守られる中亡くなりました。

とてもやさしくユーモアたっぷりでみんなの人気者でした。

桜の季節には毎年、桜シュトーレンを送ってくれた愛すべき友。

彼女は亡くなる1・2年ほど前には、認知症で

私のこともわからなくなっていました。

最後に、そのホームを訪ねた時はお昼時で、

カレーライスを食べていました。

介護士に代わって彼女の口にスプーンを持っていくと、見知らぬ私の

手からカレーを食べてくれました。


 周囲の人に彼女の若かりし頃の自慢話をしながら、

楽しい時間が続くうちに、

気づいたら彼女の目からいっぱい涙がこぼれていきました。

そしたら私も涙が込み上げてきて、二人で手を握りながら泣きました。

この時、愛には変わりがないのよっていう言葉をそっと

聞いたような気がします。


 どういうご縁か、二人ともスチュワーデスでした。

一人は日本で一番最初のスチュワーデスとして、活躍しました。

大空を飛んだ二人の人生は、私の心に消すことの出来ない光を

与えてくれた友だったのです。
                                葉香




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