名まえ


                            2022.8.6

酷暑という名を付けられた8月を迎えました。

今月は、お仕事の内容を離れて私生活について書きました。

十年以上、経験したことのないようなことが続いたこともあって。

昨年暮れ頃から半年の間に、何故かほとんどの電気製品が壊れてしまいました。

洗濯機・掃除機・トースター・ガス給湯器・ガスレンジ・冷蔵庫・CDラジカセ。

他に新しくしたものはスマホ・お部屋の天井・お風呂場・風呂釜等です。

いっぺんにやってきた出来事に何が起きているのかわからないまま、とにかく全部

次から次へと新しく買い替えたり修理したりした数か月の私生活でした。


最後は冷蔵庫です。

長年丈夫で、一度も故障したことのない冷蔵庫が大きな音をたて始め、外側が高温

になり危険を知らせてきました。

新しい冷蔵庫が届く前日に、古い冷蔵庫を隅々までお掃除していたとき、深い感謝の

気持ちがこみ上げてきました。

一日だって無いと困るものなのに・・。暑い日に氷を入れて冷たくした飲み物や食品

を新鮮に保存してくれたことへの最後の日にやっと捧げた深い感謝。

そういえば名前すら付けていなかったことに気がついて、今度来る冷蔵庫にはきっと

名前を付けて、毎日感謝を忘れないでいようと思いながらさよならをしました。


7月末に届いた冷蔵庫に、早速名前を付けようとしていろいろ考えている時、テレビで

「ちびまる子ちゃん」が目に止まりました。すぐにシンクロが起きました。

何と、まるちゃんが物に名前を付けようとしているシーンだったのです。

自転車にはリンリンはどうじゃと、おじいちゃんがすすめましたが、まるちゃんは車輪

が円いからまるまるがいいよと言ってそれにしました。その日、まるちゃんはお家の

道具に名前を付けたがっていました。 


そして次が冷蔵庫に付ける番。

まるちゃんはどんな名前を付けるのか参考にしようとじっと見ていたら、決まったのが

「ひえぞう」だったんです。  この漫画が長く続く理由ってこのユニークさでしょうか?

ただ我が家のオシャレな新しい冷蔵庫にはその名まえ似合わないので、洒落た外国

人の名まえにしようかと考えています。


ずっと長年使い続けてきたこの身体について、私はどのくらい労りそしてどのくらい

の感謝を捧げてきたんだろうと思い至りました。

特に顔の造作をけなしたり、あれこれケチをつけだんだん増えてくる皺にあきれたり

はしても・・。

どの器官、組織、そしてどの機能一つとっても絶対に必要不可欠なものばかりの身体。

超高性能な二度と創ることが出来ない、私にだけ与えられた私の身体。

新しいままでいてはくれなかった家電製品のように、私の身体にも常に変化が起きて

いるんだよって教えられているようでしゅんとなりました。


古い冷蔵庫の大きな音は悲鳴のようにも、良く働いたという安堵の声にも聞こえ、ずっ

と耳に残っています。

今、窓の外で蝉が大きく鳴き始めました。

物も生き物もそして身体も、少しでも長く元気でいられるようにしていこうと思いながら、

目に映る全てのものを愛しく感じた葉香でした。                       
                              葉香



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