置き忘れたもの
                       


                                     2014 6.3

このひと月の間、頻繁に取り組んだことの一つが心の置き忘れでした。
心の置き忘れとは、感情的に深く接触した人との経験によって、本人にとって不可欠な
生命力のエネルギーの一部分が失われることです。
それは置かれた状況によって様々な様相を呈します。またこの置き忘れについては人と
の関係だけでなく、その周辺の環境や家、土地、動物や物などにも関係します。



数年前にお会いした婦人は当時、何年も体に激しい痛みを抱えていました。
長い人生を共に歩んだ夫との死別は、本人の想像以上の苦しみをもたらしました。
うつ状態が続き激しい痛みとなり、早くその痛みを解消しようとあらゆる検査をしたり、
薬を飲んだりするのですが、悪化の一途をたどり一向によくなることはありませんでし
た。


痛みの原因の一つに、心の置き忘れがありました。エネルギーを多く分かち合い、惜し
みなく与え、性的に交わされた数々の情報を共有し、過ごした時間などの蓄積によるも
のも多数ありました。
相手を喪失しても、無意識は今なおその相手とのエネルギーに固定された状態のまま
日々が失われていくことによって霊的・精神的・感情的・肉体的にエネルギーの激しい
消耗が起きていました。
その方の本当の痛みはまさにこの痛みでした。


やり取りした相手とのエネルギーを夫々浄化し解放し、本来あるべきところにそのエネ
ルギーを返すことによって、意識は今に戻されることが可能となります。
その方は痛みのために何年も歩くことも出来なかったのですが、喪失感を癒しエネルギ
ーの場が今この時に焦点が合うにつれて、生きて歩いていく力を取り戻していかれまし
た。


また失恋によってもたらされる置き忘れもあります。
これも数年前のことですが、とても魅力にあふれたその美しい女性は、過去につらい別
れを経験してからというもの、その後何年にもわたりまったく新しい男性が現れませんで
した。

そこには別れた男性との間に心の置き忘れがありました。
その男性に一途であったその女性は、彼が去った後も彼を求めていました。その彼は
他の女性と結婚してしまい、彼への想いは絶望へと変わり自信を無くしたまま、長い年
月が立つうちにそれを心の奥へと追いやっていたのです。


また潜在意識レベルではその人と結婚しているような状態が続いていました。彼女はず
っと彼との結婚を求めていましたが、まさか別れた後まで自分の心の夫に操を立ててい
たとは露程も思っていませんでした。
そして新しいパートナーを求めてきたにも関わらず、出会いを現実のものにすることがで
きなかったのでした。


こうした現実の背景をつくる根源に気づくことは、とても困難なことでもあります。
またそれを手放すためにはエネルギー的な処理が必要とされるため、なかなか解放さ
れずにそのままの状態が何十年も続くことがあります。
過去にした数々の誓いやエネルギーは前進することを妨げ、終わってしまった今となっ
ては不要なものとなってしまっているのに、絶えず現在を支配していたのです。



それを浄化し解放した直後、彼女にやってきたものがありました。
なんと生まれて初めてプロポーズされるということが起きたのです。
長い孤独の末に人生の変容を成し遂げた姿を目撃して、我ながら喜びでいっぱいになり
そう私たちは今を生きる必要があるとつくづく実感しました。
そのことを知ってから、人が生きていくために真の自由を手にすることはとても大切なこと
と考え、力を尽くすようになりました。
こうした心の置き忘れを浄化し解放することは、霊的な強さを劇的に高めます。




このようにパートナーとの関係によるものがありますが、その他
虐待や精神的暴力、また精神的なマイナスの強い絆が形成されているような場合、親子
兄弟、友人、職場や学校などの人間関係、愛するペットなど多数あります。

この置き忘れは、歴史レベルでも繰り広げられます。
自分でも理解できない感情の嵐に巻き込まれてしまい、理不尽にも無力感に襲われたり
日頃の自分ではけしてしないような決断や選択をしたり、恐怖や不安を感じたりすること
があったりします。そうしたケースで時々見られるのが、過去世から持ち越した歴史レベ
ルの置き忘れです。



その他に家や故郷に対する想いが現実の選択を大きく制限することもあります。
経済的にも社会的にも自立していて、あとは理想的な家を購入することを願っていた方
がいました。とても長い間気に入る物件を探し続けました。
ところが、良さそうな家が出てくるたびに急に挫折したり気持ちが落ち込んでしまい、もう
何がいやなのかもわからず、とにかく探しては止めまた探しという生活が何年も続くだけ
で家を購入することに、激しいストレスを伴いました。


この方が心の奥で本当に探していた家は、彼が生まれ育った実家だったのです。
現実にはやり遂げたいことが他にあって、実家を離れて暮らしていました。しかし長男の
彼には、幼い頃から実家の後継者というポジションが定められていました。そのため彼が
帰る家というのは実家にあったのです。


彼が実家を離れた後、実家はご兄弟が継ぐことに決まりました。
そのとき彼の中で帰る家を失ったという喪失感がありましたが、幼い頃からインプットして
きた帰る家はあの実家だという認識とが、潜在意識の中で混在するようになりました。


新しい家が見つからないのは条件が合わないためではなく、彼には他に帰る家があった
こと、しかしもうその家は彼が帰れる家ではなくなっていたこと。そして今住んでる場所が
自分の帰ることが出来る家だというふうに認識できていないことに、本当の原因があった
のです。


そのことに気づいた彼は、なぜ家が見つかるたびに哀しくなったのかが理解できました。
実家への想いや心の荷物や背負ってきたものなどを解放し浄化し、実家に向いてきた想
いやエネルギー的な執着を手放した後、再び人生の流れが始まったのです。
彼の家探しは、彼が暮らしたいと望み愛を感じて帰ることが出来る家を見つけることによ
って終わりを告げました。


自由への解放、という言葉がこのひと月また幾度も私の頭をよぎりました。
自分本来の力を取り戻し、自由な選択の力を持ち、今を生きることがどれほど大きな喜び
をもたらすことだろうと思うことの多い日々でした。
                                            葉香  



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