風と土と
2017.7.6
先日、テレビのサスペンスドラマを見ているような気がしたことがありました。
税理士をしているある方が、大切なお仕事でこちらにお越しになるので、
それに日程を合わせてお会いしました。
その方がこれから会いに行く先には、ある人の親族が待っていました。
それは最近亡くなられた一人の女性の親族です。
お子さんのいないその女性は、遠い親族に何億かの遺産を残されました。
その相続の手続きを任されて、東京まで来られたのです。
親族にとっては思いもよらない出来事だったようです。
これから彼らの元へと出向かれる税理士の彼女のことが、福の神様のよ
うに私の目には映りました。
時を同じくした頃、また別の一人の女性からお便りをいただきました。
夫の長い闘病生活を支え続けたその女性は、最近そのご主人を亡くされま
した。様々な、想像も出来ないような苦しみや悲しみを経験されただろうと思
います。送られてきたメールには、ご遺骨を海に散骨する際の様子が写され
ていて、大きな衝撃を受けました。目に焼き付いて離れなくなったその写真
から、様々なことを考えさせられました。
このひと月の間、他にペットが死んだという悲しい電話を、別々の友人から
二件もらいました。
一人はこれからそのペットのわんちゃんを葬りに行くという時に。
そしてもう一人は、亡くなった寂しさから抜け出せないというお電話。
長年一緒に暮らしたペットの死は、彼女たちに大きな喪失感をもたらしていま
した。
このひと月の間に起きた、死に出会うという経験を通して、やはり最も心に残
ったことは、変わらないことはないのだということと、私たちの身体は自然その
ものだという感覚が実感としてやってきたことでした。
海に溶けるように沈むお骨の姿を見たとき、有無を言わさぬ説得力がありま
した。
自然や生命体を表す言葉に五大という言葉があります。
空大・風大・火大・水大・地大というふうに私たちの身体を表しているものです。
その中で、空大の性質は変化性を意味しています。
生命は固定化しないで変化するということを表すものですが、
私たちの生命活動そのものは、いつも留まっているものではないのだという
教えをそのままに実感しました。
またそうした生命活動を意識したり認識する機能を持つ識大、これらを合わせた
六大についての実感だったと思います。
学問上の知識が活きた知識となったような気がしました。
人としての日常をおくり、人とかかわることによって起きる全ては活きた知識ですね。
肉体を持ったからこそ得られるものなのでしょう。
このたびの四つの死の物語は、私たち自身というものは死や自然以上なのだと
私の心に強く訴えるものがありました。それは一つ一つの命がもたらす存在その
もののリアリティです。言葉にならないけれど、そこに実際にあるもの・・・。
人の心を揺り動かし訴えかけ、残された人にたくさんのものを与え、また教え、
光や力や悲しみとなる、そんな物凄いもの。
物事も人もその体も変化し続け、心も縁によって様々な影響を受けながら変化
していくという生命の在りようは、川の流れとよく似ています。
淀ませることなく、逆らうことなく生命の在るべきように流れていきたい。
でも、税理士の彼女が思いがけない手続きのために、いつか私の元へと訪ねて
きてくれるといいなと、思いました。
葉香
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