巡り

                              2022.3.8

その日は昨日までとちがって陽射しが春のように感じられ、大きく深呼吸しました。

部屋にあるカレンダーには、啓蟄と記されていました。

太陽の光と空気の変化を感じ取り、大地の生き物の様子を短い言葉で美しく表現し

時を一日の狂いもなく暦に記した、古の人々の繊細さとその感性の豊かさを大変誇り

に思いました。

長く感じた冬も新しい季節へと移行しています。


そんな中、冬がいつまでも冬でい続け、冬が去ってくれなかったらどうなるんだろう・・・

とふと思いました。

美しい日本に住む私たちは、みんな季節が巡ってくることを知っています。

でも心にはいつまでも冬が滞在し、啓蟄を喜ぶ機会をなくしていることがあります。

私の中にある厳しい寒さを疑問にも思わず、そうだと受け入れてしまっていることに

何かの衝撃によってハッと気づかされることがあります。

特に自己制限的なつぶやきや否定的な言葉の繰り返しによって、冬は終わることなく

長く居座り続けます。


どうせ自分はだめだ。 いつも失敗するからな。人は嘘つきだ。面倒だからやめよ。

明日でも間に合う。下手な私。あれもこれもまだだ。年取って皺が増える。

誰も思いやってくれない。上司はなんて意地悪なの。パートナーは底意地が悪い。

誰にも分かってもらえない。また今日も・・・・・。今日は頭が痛くて気持ちが暗い。

私にそんな価値はない。核爆発が起きることを考えたら・・・。

このような言葉を何回も繰り返しながら生活していても、それがどんな現実を作って

いるかという自覚はありません。


しかし、そうした頭の中の言葉は確実に日頃の態度を左右します。

「始めに言葉ありき」は意味深く、一日は発する言葉によって構成されていきます。

自分の頭の中のつぶやきがどんな言葉を書き連ねているかを、じっくりと観察するこ

とによって思考のパターンを知ることが出来ます。

それが肯定的であればあるほど、物事はスムーズに進むように出来ています。

そして使う言葉は変えられます。

過去にそうだったからといって、これからもそうである必要はないし、そうしなければ

ならないことはありません。現実をどうとらえるかは自分が決められます。

いつだって、私たちは自分だけは変えられる。


ある日の私は、人はあんなに簡単に出来るのに、どうして私には出来ないの?

と自分を繰り返し怒っていました。みじめで小さくなって、呼吸も浅く背中をまるめて

ふと窓に映った私の姿は、人様にお見せしたい姿とは思えませんでした。

そして他のある日、今日一日は幸せにしかならないと決めてスタートした朝がありま

した。その日は自分が考えていることを見張っていて、ネガティブエネルギーが入り

込む隙を与えませんでした。そう、幸せでいなくちゃならないから。


その日起きたことはいつもの倍くらい、人からの様々な連絡があったことです。

また珍しく、通りがかった八幡神社にお願いの挨拶に行ったりしました。

私はよく人のために祈りますが、神社に行ってお願いすることはあまりありません。

その日は、身を粉にして素晴らしい作品を作り続けている友人に良い引っ越し先が

見つかりますようにというお祈りをしたのです。

友人は更新月を迎え、お家賃も見直しお引越しして新しい暮らしをしようとしていた

のですが、なかなか良いところが見つからず困っていました。


この話には後日談があるのですが、

その友人、何と大家さんから3万円も家賃を値下げしてもらうというありえへんこと

が起きたのです。結局住み慣れたそのお家を新家賃で更新し、今まで通り暮らす

ことにしたそうです。

それを知ったとき、すぐに八幡様にお願いしたことを思い出して、なんというか

言葉にならないけれど、心の声を聴いてもらえたというすご〜く大きな喜びが湧いて

きたことがありました。

今まで、心の祈りは数え切れない程叶えられたと思います。

特に命の危機、困難、問題、病、トラブルなど、ヒーリング場面では日々遭遇する

ことに対しての祈りは、いつも見過ごされることはありませんでした。

でもこの度のような祈りは、すごく楽しかったのです。

日々の暮らしの中で、喜びや安心をもたらす波動領域にも、いろんな領域があって、

私たちの心や生活を大きく広げ心地よく満たしてくれてるのです。


古の人々の、敏感で繊細な感じる心を私たち民族は持っています。

先祖は、「幸せ」という言葉をつくりました。

一日をどんな言葉で始めるのか、そしてどんな言葉で締めくくるのか、それは本当に

自分に委ねられているようです。

                               葉香


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