梅見月
2023.2.1
北国の人々が、春を待ちわびる気持ちには特別のものがあるようです。
今年の厳しい寒さや社会の変動などで、身体も心も冷え込む気がした方が
多いかもしれません。皆様お元気で二月をお迎えでしょうか。
如月・梅見月・初花月・雪消月と名付けられたこの季語、美しいですね。
気がついたら三十年以上通ってる美容院があるのですが、その美容師さんは
今年二月で80歳になります。ある日とっても寂しそうな顔をしていました。開業
の時からずっと来てくれていたお客様も毎年少しづつ亡くなられたのだそうです。
いつも黒の衣装を身につけファッショナブルで、抜群のカットさばきを持つその
方は、寒さの中で芳香をたたえる梅の花の咲く頃に生まれました。
強くて逞しく、心の内から鬼を追い出してきた女性なのです。
そんな春を待つ気持ちは、私にとっても今年は特別なものでした。
夏以来活動する体力は失っていましたが、失わずにあるものが一つありました。
この命です。凄く頑張って少しでも健康になれるよう努力しましたが、
寿命は与えられっぱなしだったのです。
心を覗けば、二つのものが存在しています。
善と悪・陰と陽・愛と無関心・光と闇・・・。異なるけれどそれらは一つの裏表。
死の裏側には生きることへの飢えがあり、悲しみの淵には喜びへの渇望があり
ます。敵意の中で優しさの重要性を知り、孤独の中で繋がりの必要性を感じ
このたびのように、病の中で健康の意味について多くのことを気づかされました。
この相反する二つのものはそのどちらも、進化を促し気づきをもたらします。
留まることなく流れることによって、命が営まれていきます。
身体のエネルギーシステムが滞っていると痛みや不具合が生じますが、その
原因となる心の滞りが解消されると痛みが消えます。
繰り返し起きる不具合には、幾重にも重なる原因があります。
それを見つめ理解すると、見えるものが変化していきます。そして、相反する二
つのものの奥に、真の本質が姿を現します。
真の本質は、無限の愛ではないかと思います。
身体を動かすのが苦しくじっとしてるだけの時間、出来ることは息だけという時。
その吸っては吐く息の向こうに安心と平和がありました。
その息に助けられながら、こうしてコラムを書いています。
真の本質とは命の本質なのだと思います。その本質は、けっして私を見捨てる
ことはありませんでした。おかげで新しい一日がやってきて、昨日とは異なる喜
びや悲しみや驚きを経験しています。
そしてもう一つ。また生きていたいと思う力をもたらしてくれたのは、優しい思い
やりに触れられたことにあります。人間も動物も植物もみな、思いやられて育つ
ものなのだと心から感じました。この世界から優しさが失われたら人は生き残る
ことは出来ません。与えられた命に火を灯し、輝かせることが出来るのは人間
の持つ愛と思いやりだから。
葉香
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