生存と生活
2014.9.7
最近とっても心に残ったお話があります。
くじけそうになった心に力と命の水を与えてもらったような気がします。
それは中村天風さんが、イマヌエル・カントの幼い頃のある出来事とご自身の
体験について書かれた本の一節。「天風先生座談」から。
カントは背中に団子のような大きなこぶがあって、脈は120も130も打ち、
喘息で今にも死にそうな子供でした。苦しみと痛みが日常でしたが、貧しいた
めに町に巡回の医者がやってきたとき、やっと診てもらいに行けたのです。
しかしこの医者との出会いによって、カントは偉大な哲学者になっていったの
だそうです。
その医者は彼にこう言いました。
「君の体は、見ただけで痛かろう苦しかろうとすぐにわかる。でも君の心はどう
でもないだろう。心までせむしで息もどきどきしているのなら、これは別な話だ
がそうじゃないよね。
同じ苦しい辛いというその口で、心の丈夫なことを喜びと感謝に考えればよい
だろう。体はとにかく、丈夫な心のおかげでお前は死なずに生きているじゃな
いか。丈夫な心のおかげなんだからそれを喜びと感謝に変えていったらどう
だね。わかったらもうお帰り。」
そうしてお家に帰ったカントは、それまで生まれて17年間、毎日のように痛
みと苦しみに苛まれていたのですが、寝て起きてまた明日、喜びと感謝の毎
日を過ごし始めたのです。医者の言葉に魂を揺り動かされ、まずどっちが本
当の自分なのかについて考えはじめたのです。
天風さん自身、当時は死の病であった結核にかかっていて、病が治るものな
らと世界中を旅して学ぶ中、インドの聖者に出会って悟りを得るのですが。
この話を交えながら次のように書いておられます。
「たった今からこの死に至る病から離れよう。来る日も来る日も有難い嬉しい
と思うことに努めただけで、一週間たち二週間たちひと月たち二月たつに従
ってぐんぐん気持ちの中が洗い清められるようになった。
同時に肉体がどんどん治って来た。」
「人間には辛かったり苦しがったりする方の自分と、喜びと感謝で生きられる
方の自分とがあります。心の中のもう一人の自分を探し出して、たった今から
どんな人生に生きようとも、矢でも鉄砲でも来い。俺の心は汚されないぞ、俺
の心の中は永久に喜びと感謝でいっぱいなんだという気持ちで生きてゆかれ
れば、その結果どうなるか、事実がきっとあなた方に大きな幸福という訪れで
もってお応えすると思います。」と書かれていました。
生きているという現実は、生かされている部面(生存)と生きなければならな
い部面(生活)の二つが一丸となって生きています。
自分で自分の生命を守るという意識や感覚のないときに、こうして生きている
その命は何の力でしょう。それを宇宙エネルギーというふうに表すと、この命
を支える宇宙エネルギーを受け入れる受け入れ態勢によって、生きている
現実の状態が変わってきます。天風さんはこのように語っておられます。
このエネルギーを十分に受け入れるには、私たちの潜在意識の観念が積極
的でなければなりません。私はヒーリングセッションを通して毎回そのことを
実感してまいりました。積極的というのは肯定的で喜びや平安や一体感・安心
また私たちが生きていかれると感じられるような力、情熱や希望、選択の自由
美や真実や尊さなどをさします。反対に分離感や恐怖や否定的な感情をもた
らすような観念は命のエネルギーそのものを妨げていきます。
読む度に心の深くに語りかけてくれる真実のあり方は、繰り返し繰り返し魂の
夜明けをもたらしてくれます。
葉香
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