白隠さん



                              2015.9.9

今年の9月は雨の始まりです。皆様お元気ですか。
心を静め様々な良い実りをもたらす瞑想について先月お話しましたが、
禅もその一つです。私はお寺で参禅をしたことがありませんが、
書籍や講義によって、少しだけ知っている程度です。
中でも白隠禅師のエピソードは、心に深く刻まれています。
禅の修行によって悟りを開いた白隠さんは、ご自身の難病を克服した人
でもあります。
その経験を「軟酥の法」という書物に書き記し、これまで数えきれない人々
を病から救ってこられた方です。
イメージ療法という療法が、西洋から伝えられるずっとずっと以前から、
日本には存在していました。
理論的にも素晴らしく実際的にも確かな結果をもたらすイメージによる療法を、
江戸時代にこの白隠禅師が伝えています。


かいつまんでその一部をお伝えすると、以下のようなものです。


頭の上に大きな卵を乗せます。
それはふくよかな香りと何十種類もの神の薬効成分が入っています。
温められたその卵が溶けて、頭から全身に伝わって足先まで届き、
温められた足さきから薬効成分が溜まっていきます。
体から悪いものが全部排出され、同時に不安や恐れ怒りなど全てが解放されて
終わったときには安らぎとともに力が漲り、病んだところが癒されていきます。
その間、神のお使いが体中を撫でてくれる。
というようなイメージです。



白隠さんのことを知れば知るほど素敵な人だと思うエピソードがあります。
彼が有名になり、多くのお弟子さんたちが集まるようになっていた頃。
近所の人々も大勢、彼の話を聞きに来ていました。

その中の或る家族の娘が妊娠したらしいのです。
娘はほんとの相手のことを親に話せず、白隠さんだと偽ってしまいました。
みんなから尊敬されていた彼の名前を口にしたら、
叱られないと思ったのでしょうか?

父親は物凄い剣幕で彼を悪し様に怒鳴り散らし、子供が生まれるなり
その子を白隠さんの元に預けてしまいました。
彼は何も言わずに、飴や重湯でその子を一生懸命に育てます。
大勢いた弟子たちも呆れて、皆彼の元を去ってしまいました。
道を歩く彼を見て、石を投げる人もいる始末でした。

ある日、子供の様子を陰で見ていたその母親がたまりかねて、本当のことを
父親に告げました。
父親は頭を地にこすり付けるほど小さくなって、白隠さんの元を訪ね
お詫びをしました。
すると白隠さんは「そうか、この子にも父親がいたのか。」
と言ってそれ以上咎めることもありませんでした。



とってもマネの出来ない超すごっ!のお坊様です。
でも白隠さんはこの世の起きる出来事には、必ず原因があるということを
深く知り理解し、その法を体現なさっておられたのではないかと思います。
病に苦しんだ経験は、人々への深い慈愛をも育んだのだと感じました。

                                   葉香




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