ご縁

                                2017. 4. 7

新しい季節になりました。

新入社員のスーツ姿や小学一年生のちょっと大きめの制服姿が初々しい。

期待と不安が入り混じった心を、その制服に包んでいて健気です。

初めて会う人々と、これから様々な関係性を築いていくスタートのときです。



仏の教えに、苦厄を四苦八苦という基本的な言葉で表されていて、人々を

おそう苦しみを簡潔に言い表されています。

その一つに怨憎会苦という言葉があります。

嫌いで憎しみを感じている相手と共にいなければならないという苦しみ。

またこれに相対して愛別離苦という言葉があります。

愛する人と別れなければならないという苦しみ。

他には求不得苦という欲しいものが得られない、思うようにならない苦しみ。

こうした苦しみは、生まれ、感じる力を授かり、記憶したり判断し、生命を

守るために行動し、自我を持つ人間であるがゆえに起きる必然。

この必然の中で、関係性はスタートしたら変化していくプロセスをたどらなけ

ればなりません。



私は母の子であり、一人の子の母でもあります。

かけがえのないこの二人との関係の中でも、成長するにつれて様々なことを

何十年にもわたって経験しています。

私たちの最も大きな苦しみは、そんな大切な人との間で起きることだからだと

思います。特に家族や愛する人が与える幸せはとても大きいものです。

反対に命を損なう要因となるほど苦しみを与えるものでもあるように思います。

これらは、絶えることのない様々な縁によって生じます。



自分や人々のこうした苦しみに出会うたびに、これも全て変わっていくのだと

思えたら手放しやすいだろうになと思います。

私はこの頃、息子のことを近所のおっさんだと思うようにしました。

これは思いの他効果的で、私がお母さんでいることからずいぶん解放して

くれました。



こうあるべきだという考えより、他にはどう考えられるだろうと考えてみる。

誰かへの辛い気持ちに襲われたり不安になったりしても、心の中にある

幸せの種に目を向けて、好きなものを膨らませるとどうだろう。



先日、ダムが好きだという女性がテレビに出ていました。

春になると、開かれた水門から何万トンもの水がどっとあふれる光景や自然

を見るのが大好きな一人の女性が紹介されていました。

それが好きすぎて、嬉々として全国のダムを見て回るのです。

驚きながら歓声をあげるその人の姿を見ていて、私はそのダムよりも感動

しました。(なんだか、文章が最初の仏様の文面と違ってきました。)

このようにシンプルな喜び、それを喜べる能力を私たちはみんな持っているこ

とを思い出させてくれたからです。

小さい子供は、一日中そのような喜びに浸っていることが出来ます。

この女性はその気持ちに素直に生きておられるように見えました。

こだわりさえしなければ、その喜びは私たちのすぐそばにあるような気がします。


ご縁を心温まるものにしながら、そのご縁に縛られることなく自由に

喜びを生きるという方法も、私たちをその苦しみから助けてくれます。

                               葉香





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